けふ2薬局劇薬置場
うららかな夏の午後の昼下がり、がらんと大きな部屋の中央に武士らしき人間が二人、将棋を打っていた。二人ともしかし、心ここにあらずといった面持ちで、時々雑談しながらもパチパチと駒を動かす。
二人とも、立場上も心理的にも複雑なものがあった。
「しかしわからんな」
片方の背の高い方の男がぼそりとつぶやいた。明智光秀である。
「なにがです?」
つられてもう一方の華奢な体つきの、男というよりは少年という言葉の似合う方はあいずちをうった。藤吉郎だ。
「お前といい道山様といいあの信長のどこがいいんだ?」
パチリ、と部屋に音が響いた。
藤吉郎は苦笑して
「光秀様も使えてみればわかりますよ」
とだけいい、駒を返した。
「俺があのうつけに?」
光秀は信じられないといった顔で問い返す。
どうしてこいつはこんなに嬉しそうにあの殿の事を語るのだろう?
「冗談だろう?」
藤吉郎はまた、苦笑した。
パチっ 「大体お前、あの殿に使えているとまた今回みたいに命懸けでつかいっぱしりさせられるんだぞ?命が惜しくないのか?」
「俺は殿の道具でいいんです」照れたように言う。
この発言に光秀は今まで打っていた碁盤に突っ伏して驚きを身体全体で表現してしまった。せっかく勝っていた勝負だというのに
「ああっ!?光秀様!?」 おたおたと碁盤を片づけようとする。
「お、お前、他人の道具でいいのか!?自分は!?自分の事はどうでもいいのか?自分が武将になって天下統一したいとは思わないのか!?」
光秀は日吉の細い肩をふって説得しようとした。この小さい肩で何が出来るんだろう?顔もまだ子供に近い。
日吉は光秀に揺さぶられながらも目を点にして見つめていた。
「天下統一なんて・・・」
「天下統一じゃなくてもいい、もう少し上の位が欲しいとは思わないか?」
「そりゃ思いますけど・・・。俺、基本的に信長様が大好きですもん」

ああ、そうか・・・・
光秀はアマミノクロウサギ(奄美大島にいる絶滅が危惧されているウサギ)を見たかのような気持ちで日吉を見つめる。
こいつは『自分』の上に『信長』という絶対神を持っているんだ。多分、こいつの精神世界の中のほとんどは信長で締められているんだろうな。それで、その空いた所にちょこっと自分というものでもあるのだろう

こいつのなかで俺はどの程度の位置を締めているのだろう

不意に頭の中に沸いた質問に光秀は身体をびくっと震わせて動揺した。別にどうでもいい事じゃないか、こいつの事なんて・・・
そう言っている理性に反し、光秀の心臓の鼓動はどんどん高くなっていく
「光秀様、もう一回やりましょうよ」
光秀の内情を知らない藤吉郎は駒を最初の位置に並べていた。光秀の方も並べてくれたらしい、もういつでも勝負は出来るようになっていた。
光秀は一回大きく深呼吸をする。
「ああ、もう一回な」

願わくば、信長の10分の1でも、君の中に私の場所がありますように


あああああ、私は何かいているんだ・・・。ってことでノブヒヨベースのミツヒヨです。
なんだかなぁ、もう。一体何処を如何取ったらそうなるんだ〜ってなかんじです。しかも今回同人娘お濃(笑)を書けなかった事が心残りです・・・
オンナノコが好きな私は同人娘を書いていると元気が沸いてくるのです


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